杉やヒノキの人工林を歩いてて
「退屈だなー」
って思うことない?
幸田文さんのエッセイ『木』を読んで、静寂の魅力に目覚めました。
あなたにも薄暗い人工林の魅力を知ってほしい!
本日のお品書き
🌲 奥武蔵は人工林が多い
古くから林業が栄える奥武蔵は、杉やヒノキの薄暗い登山道が多い。
物見山山頂は、多くの広葉樹に彩られるけど、そこから北向き地蔵へ向かう道は、広大な人工林。
ズラーーーッと並んだ杉やヒノキは、皆同じように細く、長く、まっすぐで、
日を遮り薄暗く、鳥や虫を育まない。
加工しやすいように、人に管理され、枝を落とされ、1本の棒の上にわずかな梢と葉を頂く樹形。
近くの広葉樹林から聞こえてくる鳥の声は楽しげで、取り残されたような寂しさを感じます。
🌲 鷹揚な、ユガテの大きな杉
お昼過ぎに、山の中の小さな集落・ユガテに到着しました。
木陰のベンチでコーヒーを淹れて休憩です。
足元に落ちてる茶色の木の実を見て、気付きました。
これって杉じゃん。
人工林の杉と、あまりに違う樹形だから気づかなかった。
天を衝く三角錐の樹形。
堂々として、ゆったりとして、なんだか話しかけてきそうな親しさです。
📖 幸田文『木』を読んで、木を愛でる感性を養う
本書は、作者が書き連ねてきた、木にまつわるエッセイを編集したものです。
一番古くて、1971年。
50年以上前。
古臭さを全く感じません。
それどころか、触れれば滴るようなみずみずしさを感じます。
それは、著者の文才の妙なのか、
それとも木が生きる悠久の時の流れからしたら、人の世の50年なんて、一瞬のことだからかもしれません。
著者は、小雨降る中で北海道の演習林を見学した時の感想を、こう記します。
木はまことに無言であり、
私はなにか誰かに語りかけたくてたまらないのを、
ただ控えて、
森林の静寂に従って佇んだ。
これ!
杉林で感じた寂しさは、まさにこんな気分でした。
「なんか退屈~」って感じるのは、私の感受性が鈍ってるだけ。
寂しさこそが人工林の魅力かもしれません。
さらに印象に残ったのは、営林署の方々の話。
一度植えれば、それは終生の子として思い、どうしてどうして忘れるものじゃない。
林業に携わる人が見たら、どれも少し捻くれていたり斜に構えていたり、個性豊かな可愛い我が子なのかも。
天然林=素敵
人工林=退屈
って割り切るんじゃなくて、人工林の静寂さ、枝葉を伸ばした大杉のおおらかさ、それらを同様に愛でる心の柔軟性を持ちたい。って思いました。
🌲杉やヒノキの人工林も楽しく歩く
幸田文さんの視点をマネて歩くと、「なんか退屈~」な杉やヒノキの人工林も、静謐な気持ちで歩けます。
今度の登山では、杉林で足を止め、静寂に身を浸してみてください。
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