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『完本 神坐す山の物語 』浅田次郎|神と人の美しく切ない短編集


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『かみいます』と読みます。

狐憑きや天狗などが登場しますが、決してオカルトに分類できない、

神様と人間の関わりを描いた、神聖で清浄な物語です。

もくじ


 

📖 作者の浅田次郎さん。ルーツは御岳山の神職

悪漢小説『きんぴか』シリーズや、

歴史小説『壬生義志伝』、

地下鉄で過去を旅する『地下鉄に乗って』など幅広いジャンルの本を書かれています。

本書は、初の自伝的小説。

 

浅田次郎作品にはよく、

「自分の命より、他人の幸福」

みたいな信念で行動するキャラが登場します。

この自己犠牲の美学、本書を読んで、その源流に触れた気がします。

 

浅田次郎さんの中に、太古から続く神官の血脈と、御岳山に息づく神の存在があったのです。

🏩 御岳山の御師集落での物語

信仰の山・御岳山

そこを訪れる参拝者のための宿坊が、物語の舞台です。

 

夏休みになると、ぞくぞくと親戚親類縁者のこどもたちが集い、
標高1000mにある宿坊で、短い夏を共に過ごしていたそうです。

 

本書はそこで見聞きした、神様と人のお話

🛏 蒲団の中で聞く、伯母の寝物語

夏の間、子どもたちの面倒を見てくれたのは、美しく厳しい、ちとせ叔母

広い座敷にふとんを並べて眠る子どもたちのために、寝物語を語ってくれます。

 

この舞台がもう最高。

二階の座敷の窓には、カーテンも障子もなかった。

鬱蒼たる山巓の森を開いて建っているせいで陽光を遮るそうした調度を必要としなかったのだろう。

だから伯母の寝物語は、
いつも水底のように青ざめた月光の中か、
さらに秘めやかな星あかりの中で聞いた。

静かで、穏やかで、温かくて…

もうこれだけでうっとりと眠たくなってきます。

👻 幻想的で、でもリアルな怪談

ちとせ伯母が、澄んだ声で聞かせてくれるのは、

自身が経験した美しく哀しい怪談。

 

狐憑きの姫さま、

喉を嗄らして泣き続ける修験者。

 

そこに恐怖や嫌悪感はなく、
彼ら彼女らに寄り添う気持ちと寂しさが、
ごちゃ混ぜになっています。

 

本書は、耳を澄ませて話を聞いている“私”の視点と、

過去のちとせ伯母の視点を何度も行き来します。

 

行き来を繰り返すうちに、いつしか自分も、

布団に潜り込んでる気分になったり、

自分が若かりしちとせ伯母になっている気分になります。

 

それは「神の視点」に似てる気がする…

と思いましたが、あとがきにこのような一文が。

死生観を基とした仏教には時制があるが、そもそも生命の概念と無縁と神道には、

過去も現在も未来もないのである。

私が幼いころからそこで体感していた「神々の遷満」という空気は、

つまるところそうしたものだった。

過去も未来も現在も、死者も生者も、誰も彼も区別なく、

そこに「ある」というのが日本古来の神の姿なのかな、

なんて感じました。

(神仏に関する知識、皆無です。あくまで私の主観です)

🌙 『神坐す山の物語』は、眠れぬ夜に寄り添ってくれる本

リズミカルで美しい文章に身を委ねているうちに、
自律神経が整って、だんだん眠くなってきます。(いい意味で)

ひとつ蒲団に入ったいとこは、すでに寝息をたてていた。

歪んだなりに磨き上げられたガラス窓の向こうは満点の星だった。

子どもらがひとりひとり眠りにつくほどに、

星ぼしはひとつひとつ輝きを増すようだった。

ね?

誰かの寝息を聞いてるうちに、夢の中に入れそうでしょ?

☕ おわりに|ベッドサイドに置いときたい

文章のリズムのせいか、お話の雰囲気のせいか、寝かしつけ効果のある本書。

読んでるうちに気持ちよーーーく寝入ってしまうので、読了までにかなりの日数がかかりました。

よく眠れるので(?)ぜひ手に取ってお確かめください。


 

👆のリンクは、2024年6月に出版された単行本ですが、2017年に文庫版も出ています。

こちらの方が安く手に入ります。中古もあるしね。

でも『完本』は大幅に加筆・修正されてるうえに、装丁もめっちゃ素敵なのよ。

どっちを手にするかは…迷いますよねぇ~💦


 

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